波浪日報

電車で読書


 体調やや不良のため、昼間予定していた撮影はパスして夕方から搬出作業のため電車に乗って横浜へ。
 往復約3時間半の移動なので、駅前の本屋で文庫本を1冊買った。
 できれば1冊を読みきってしまいたいので、時間と見合う長さと重さの内容のものがいい。
 で、選んだのがこれ。

 
『博士の愛した数式』 小川洋子著 新潮文庫


 昨年か一昨年か、本屋さんが薦める本として評判になった小説で、帯を見ると近々映画も公開されるらしい。
 この小説の重要な要素は「数学」と「阪神タイガース」。
 タイガースは嫌いじゃないけどファンというほどでもないし、数学は心底苦手な科目・・・でも、その二つに特別な思い入れがなくても十分に楽しめる小説だった。
 悲しみと切なさを湛えた透明感のある空気がベースにあって、しみじみと暖かいものが伝わってくるお話なのだが、時折、ふっと流れてくる花の香りのようになまめかしさを感じさせる描写もあって、巧いなぁ・・と思う。
 記憶に障害のある初老の数学者「博士」と、世話をする家政婦と小学生の息子、ほとんどがその三人のささやかな生活の描写で進行する物語。
 謎めいた存在である「博士」の義理の姉を含めて、登場人物が全員もれなく魅力的なのが、ちょっと隙がなさすぎるような気もするけれど、そう感じるのは自分の品性の卑しさかもしれない。

 いずれにしても、最寄の駅に到着すると同時に「あとがき」まできっちり読み終えることができたので、非常に気分の良い読書だった。
 パソコンもないし、電話も鳴らないし、誰も話しかけてこない・・・電車で移動中の読書は、一番集中して楽しめる気がするなぁ。
2006年01月10日(火) No.258 (本)