波浪日報

ふるさとは、夏


 明日は大寒。
 ここしばらく寒さが緩んだ関東も、今夜あたりはだいぶ冷え込んでいる。

 そんな時にまったく正反対の季節、夏休みのお話を読んだ。

「ふるさとは、夏」芝田 勝茂 著 パロル舎

 著者の芝田さんは石川県羽咋市出身。
 子どもたちのサマーキャンプをする活動を長く続けてきた経験を活かして描かれた物語だそうだ。

 東京在住の小学4年生の男の子が、父親の郷里で過ごした夏休みにさまざまな経験をして(もちろん不思議な冒険もあり)逞しく成長する、という夏休み推薦図書のシールが貼られそうな物語。
 でも、設定はよくあるストーリーでも、中身は全然ありきたりではない。
 変な神様がいっぱい出てくるし、小林 敏也さんの描く挿絵が素晴らしいし、何より会話が全部能登(?)の方言で書かれているのが、すごくいい雰囲気を醸し出している。

 近年、金沢方面在住のお友だちに大変お世話になっているから、書かれている方言のイントネーションも、金沢弁に似ていてなんとなくわかるし、羽咋市は一度通りかかった程度だけれど、こんな(↓)印象に残る風景を見たところでもある。



 ・・・ああ、願わくばずっと、本の中の夏休みに逃避していたい!(切実)
2006年01月19日(木) No.267 (本)

電車で読書


 体調やや不良のため、昼間予定していた撮影はパスして夕方から搬出作業のため電車に乗って横浜へ。
 往復約3時間半の移動なので、駅前の本屋で文庫本を1冊買った。
 できれば1冊を読みきってしまいたいので、時間と見合う長さと重さの内容のものがいい。
 で、選んだのがこれ。

 
『博士の愛した数式』 小川洋子著 新潮文庫


 昨年か一昨年か、本屋さんが薦める本として評判になった小説で、帯を見ると近々映画も公開されるらしい。
 この小説の重要な要素は「数学」と「阪神タイガース」。
 タイガースは嫌いじゃないけどファンというほどでもないし、数学は心底苦手な科目・・・でも、その二つに特別な思い入れがなくても十分に楽しめる小説だった。
 悲しみと切なさを湛えた透明感のある空気がベースにあって、しみじみと暖かいものが伝わってくるお話なのだが、時折、ふっと流れてくる花の香りのようになまめかしさを感じさせる描写もあって、巧いなぁ・・と思う。
 記憶に障害のある初老の数学者「博士」と、世話をする家政婦と小学生の息子、ほとんどがその三人のささやかな生活の描写で進行する物語。
 謎めいた存在である「博士」の義理の姉を含めて、登場人物が全員もれなく魅力的なのが、ちょっと隙がなさすぎるような気もするけれど、そう感じるのは自分の品性の卑しさかもしれない。

 いずれにしても、最寄の駅に到着すると同時に「あとがき」まできっちり読み終えることができたので、非常に気分の良い読書だった。
 パソコンもないし、電話も鳴らないし、誰も話しかけてこない・・・電車で移動中の読書は、一番集中して楽しめる気がするなぁ。
2006年01月10日(火) No.258 (本)

独学魔法ノート・ふたたび


 昨日の日記を読み返して、やはりこのままではいけない気がしてきました。

 加えて、今日ゆ〜ぴゃんと話しているうちに、なぜ納得がいかなかったのかがハッキリしてきたので追記することにしました。

 何が一番ひっかかったのか・・これから読む方には申し訳ないけれど、少し内容に踏み込んで書きます。

 主人公のキャラクター云々以前に、数少ない登場人物のひとり――それもかなり重要な――が、物語の後半で亡くなるのですが、その人物の死に対してバランスが取れるほどの結末に至らないまま物語が終わってしまうのが、何よりも納得いかなかった点だったのです。

 でも、もしこのお話が第一のエピソードであり、ヒロマサヒロの独学魔法ノートはまだまだ続く、というのであれば納得できるぞ、と思いました。

 何かしらしでかしてくれそうな妹のまれん子ちゃんも、次回のエピソードでは活躍の場がありそうだし、新しくできた友だちの男の子もヒロマサヒロの今後に大きく影響を及ぼしてくるはずです。

 こう考えてみると、続編が書かれたら続けて読むだろうな、と思える作品だということで、そう捨てたもんじゃないぞ、という気がしてきました。

 最近もの忘れが激しいので、昨日の覚え書きだけで終えてしまうと、この先何かしら光るものが現れそうなのに見逃してしまう可能性が大。
 
 書き手の力を疑う前に、自分の感受性を疑え、ってことでしょうね。
 ああ、これを書いたら少しスッキリした。

 それにしても、あらためて書評は難しいと痛感しました。
 そして、こんな風に本のことを書けたら・・と憧れるのが、こちら。

 
松岡正剛の千夜千冊

 まあ、IQが100倍ぐらい増えない限り私には無理だけど・・・。(汗)
2005年05月11日(水) No.74 (本)

独学魔法ノート


 今日も今日とて、あっという間に日が暮れていく・・
 と、愚痴ばかり並べるのも見苦しい。

 で、読み終わった本の記録など。

 
 
『独学魔法ノート』
 岡崎祥久 理論社

 13歳の少年ヒロマサヒロが、魔法について学ぼうとする過程におこるさまざまな出会いと出来事。

 理論社のこのシリーズには、最近かなり気に入っている作家、いしいしんじの『ぶらんこ乗り』や、同じく『麦ふみクーツェ』などがあり、かなり期待して読み始めたのだが、読む側の調子がいまひとつだったのか、作品がいまひとつだったのか、途中で寝てしまったり、ページを閉じてしまうことが多く、それほど夢中になって読めなかった。

 全体のトーンは嫌いじゃないし、家族の描写や小物の扱いは魅力的なんだけれど、主人公が最近よく描かれるタイプの中学生で新鮮味がなく、感情移入できなかったのが「いまひとつ感」の原因だと思う。

 風変わりで精神的に自立したクールな少年って、『海辺のカフカ』をはじめとしてちょっと使われすぎ。
 たしかに、実際の中学生にそういうタイプの魅力的な子がいなくもないけれど、ファンタジーの主人公としてはやや食傷気味。
 
 読む側としても、ついつい前述の『ぶらんこ乗り』や『麦ふみクーツェ』の感動とひきくらべてしまうのもいけないんだけれど・・。

 ・・・う〜みゅ。
 愚痴っぽいのはいけないと思って書き始めたのに、結果的に文句たれな日記になってしまった。
 どうもいかんなぁ・・。
2005年05月10日(火) No.73 (本)

熊の敷石


 寝る前、ベッドに入ってから何かしら本を読むのが習慣になっている。
 ただし、あれやこれやと立込んでくると、ベッド以外の場所(パソコンデスクでよだれが危険! とか、食後のコタツで気を失うとか・・)で行き倒れるケースが多くなってくるので、ナイトキャップ読書ができるのは比較的セイカツに余裕がある時、もしくはギリギリだけど逃避している場合に限られる。
 現状はどちらかといえば後者なのだが、とりあえずの覚え書き。

 昨夜読了したのは、堀江敏幸著
『熊の敷石』

 芥川賞受賞
 
 タイトルの「熊の敷石」はフランス人なら誰でも知っているというラ・フォンテーヌの寓話からとったものだそうだが、仏文の教養に乏しい私にとってはミステリアスでちょっと惹かれるタイトルだった。
 冒頭の夢を記述した部分はかなりシュールで、このまま進むのかな・・ と思えばさにあらず、覚醒したところからは淡々とした進みゆきになる。

 この小説のキーワードは宮沢賢治の「ホモイの貝の火」。
 全体の印象としては、表面は流れているのかどうか分からないほどゆるやかなんだけれど、水量は豊かで、思いのほか深く、水面下には足を取られるような速い流れや、複雑なうねりや渦がある緑色の川っていう感じ。
 
 さーて、こんな覚え書きで、後になってから思い出せるかなぁ。
 でも、純文学であらすじを書くっていうのも無粋だし・・
 たぶん、この作者の作品はあと何冊かは読むような気がするから
 ま、いっか。

 それにしても、『新宿鮫』シリーズ制覇の直後だったから、揺り戻しが大きすぎ・・。
2005年04月24日(日) No.40 (本)